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ブルックスの知能ロボット論読了

ブルックスの知能ロボット論―なぜMITのロボットは前進し続けるのか?

ブルックスの知能ロボット論―なぜMITのロボットは前進し続けるのか?


著者のロドニー・ブルックス氏は、それまでの人工知能の研究を覆す、SA(Subsumption Architecture)を提唱したり、世界で最も出荷台数の多い家庭用ロボットであるRoombaを開発したiRobot社の取締役だったりと、世界的にも有名なロボット研究者。
まず面白かったのが、ウィリアム・グレイ・ウォルターの亀ロボットの話。この亀ロボットは、いくつかのセンサを持っていて、障害物を回避しながら光源を追いかけるというもの。バッテリーが少なくなってくると、センサの反応が鈍くなり、車庫に入って充電を行うという機能もあるという(センサ感度がよいと車庫の発する強い光に反発して車庫から遠ざかる)。驚くべきはこのロボットが1940年代に開発されたということ。このころにはもちろん、小型のマイコンなんて存在しないので、2本の真空管を使って、これらの機能を実現していたという。亀ロボットに比較して、1940年代以降の多くのロボットが知能を有しているようには見えないと、ブルックス氏が失望したというのもうなずける。
僕は学生時代に、SAを提唱した論文「A robust layered control system for a mobile robot」を読んだことがあったので、どのようにしてSAが生まれたのかとか、SAを最初に発表したときには、他の研究者から受け入れられなかったとか、いろいろな背景があったんだなぁと、裏話的な内容を知れたのも面白かった。
他には、コンピュータの計算速度だけ見れば、もうすでに人間の能力を超えているのに、なぜ知能が発現しないのか?人間の知識とは何なのか?ということについても語っている。多くの研究者は、人間が何か特別なものを持っているために、コンピュータで知能を実現することは不可能だと言っていたり、単純にコンピュータの処理能力があがれば、知能は実現できるという意見をもっていたりする。これに対してブルックス氏は、ジュース仮説というものを提唱している。この仮説によると、人間は特別な存在ではなく、知能を実現するためには、何らかの新物質の発見が必要ではないかということ。ただし、その新物質とは、そんなに凄いものではなく、カオス理論やウェーブレット理論のような、数学的表現方法の一つだという。この計算理論のことを「生命のジュース」と呼んでいるらしい。その理論が1つなのか複数なのかは分らないが、その理論が見つかれば、知能の研究は大幅に前進するのではないかという。
あとは、近い将来の未来予測している。今後は、ロボットが人間に近づいていくだけではなく、義手や人工網膜などのようなものがもっと発達して、人間がどんどんロボットに近づき、人間とロボットの境界がなくなってくるのではないだろうかとしている。
知的好奇心を刺激してくれるよい本でした。